Snon Labo

クリエイティブな音楽とイラストを探求し創造

星降る遺跡と翠の探究者

🌿 第一章:呼ばれる声

かつて古代のエルフたちが築いたとされるルメリア遺跡
人の手では到底運べぬ巨石と、未解読の文字が刻まれた柱、そして星の運行と共鳴するという伝承だけが残る謎の聖域。

この遺跡に魅せられた一人の女性エルフがいた。
名前はリシェル・フェリアーナ
長いミディアムヘアをひとつにまとめ、森の民らしい翠の目と淡い銀髪を持つ彼女は、遺跡学を修めた学者だった。

エルフの中でも珍しい「古き時代の記憶」を継ぐ血筋に生まれたリシェルは、かつて世界を支えた古代文明の謎を解き明かすことに生涯を捧げていた。

「この地には、まだ語られていない記憶が残っている。
私は、その声を聞きにきたんだ。」

夜、星空の下で遺跡に佇むと、古い石碑から微かに音が響く。
エルフの耳にだけ届くその囁きが、彼女の足を遠い記憶の迷宮へと誘っていた。

星降る遺跡と翠の探究者

🌿 第二章:封印の扉

ある日、リシェルは調査隊の仲間と共に、長らく閉ざされていた地下聖堂への入口を発見する。
苔に覆われ、崩れかけた扉の中央には、見たこともない文字と、満天の星空を模した浮き彫りが施されていた。

「これは…古代ルメリア文字。
星の位置で鍵を開く仕掛けね。」

リシェルはかつて師匠から譲り受けた古文書と、夜空の星座を照らし合わせながら、扉の解読を始める。
数日を費やし、ようやく解き明かしたその瞬間、遺跡の奥からは静かな風と共に、遥かな昔の残響が響き渡る。

「リシェル、これ以上は危険だ」

仲間の声を振り切り、リシェルはひとり扉の向こうへと足を踏み入れる。
古びた石階段を降りると、そこには星を象った水晶の柱と、中央に鎮座する古代の祭壇があった。

そして、その奥には刻まれた予言の碑

『星が堕ちし時、選ばれし翠の瞳が、古の記憶を紡ぐだろう』

その言葉に、リシェルの心は震えた。
これは…自分に向けられた、数千年前のメッセージなのか。


🌿 第三章:記憶の継承者

遺跡の最奥で発見したのは、星環の鏡と呼ばれる古代の魔導具だった。
鏡の前に立つと、リシェルの翠の瞳が淡く光り、過去の記憶が流れ込んでくる。

かつてルメリアの地に栄えたエルフの王国。
そして、星々と語らい、天空の竜と盟約を交わした先祖たちの姿。
だが同時に、滅びの予兆と世界を覆った災厄の記録も。

「私は…この記憶を、未来へ伝えなくてはならない。」

エルフの寿命は長い。
だが、すべてを遺せるわけではない。
リシェルは記憶の断片を手繰り寄せ、この遺跡の謎と過去の出来事を記した新たな書物を作り始める決意をする。

夜ごと遺跡の上に腰かけ、星を眺めながら、仲間たちにも少しずつその記憶を語り聞かせるリシェル。
やがて彼女の存在は学術の枠を超え、**“星降る遺跡の語り部”**として知られるようになる。


🌿 終章:果てなき探求

幾度の歳月が流れても、リシェルは遺跡の側を離れなかった。
村が興り、旅人が訪れ、やがてこの地に暮らす者たちは、彼女を**“遺跡の守り手”**と呼び親しむ。

やがて、新たな遺跡が発見されるたびに、リシェルはその地を訪れ、失われた記憶のかけらを集め続ける。

星々と語り合い、過去を紡ぎ、未来へと繋げるために。

「記憶は、誰かが語り継がねばならない。
私は、命ある限り、その役目を果たしたい。」

静かに、夜空の星のひとつが流れる。
それは、彼女の探求が、まだ終わらないことを告げていた。