序章 ――夜空に浮かぶ城
世界の果てに、「空へ消えた王国」の伝説があった。
その国の名は――アステリア王国。
昼には白い雲に隠れ、夜になるとだけ姿を現すという不思議な国。
蒼い夜空に浮かぶ無数の塔。
金色に輝く窓。
そして星々の間に浮かぶ、巨大な空中城。
そこには人間とエルフ、妖精、そして翼を持つ者たちが共に暮らしていた。
しかし、今ではその場所を知る者はほとんどいない。
王国は千年前、ある夜を境に突然消えてしまったのだ。
残されたのは、ただ一つの言い伝えだけだった。
「二つの翼を持つ子らが再び出会う時、
失われた王国は目を覚ます。」
第一章 ――青衣のエルフ少女
雪の降る北の村。
そこに、小さなエルフの少女が住んでいた。
名前は――ルミア。
淡い金色の髪。
長い耳。
澄んだ琥珀色の瞳。
彼女は幼いころから空を見るのが好きだった。
夜になると丘へ登り、星を見上げては考えていた。
「私、どうしてこの村にいるんだろう……」
村の人々は優しかった。
けれど、誰もルミアの本当の家族を知らなかった。
赤ん坊の彼女はある雪の日、村の門の前に置かれていたのだ。
その時、彼女の首には一つのペンダントが掛けられていた。
星の紋章。
それだけが、彼女の過去を示す唯一のものだった。
第二章 ――炎色の旅人
ある夜。
ルミアが丘の上で星を見ていると、一筋の流れ星が落ちていった。
それは森の奥へ消えた。
「……見に行こう。」
胸が不思議と高鳴った。
雪道を歩き、森の奥へ進む。
そして、彼女は見つけた。
大きな木の下で倒れている、一人の少年を。
少年は茶色の髪をしていた。
肩には白い羽が生えている。
まるで鳥の翼のようだった。
「大丈夫!?」
ルミアが駆け寄る。
少年はゆっくり目を開けた。
緑色の瞳。
その瞳を見た瞬間――
ルミアの胸元のペンダントが光った。
少年の首に掛けられた銀の首飾りも、同じように輝き始める。
「……君は……?」
少年が小さく呟く。
「僕の名前は……アルト。」
そして彼は驚いたように目を見開いた。
「どうして……君がその紋章を……?」

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